家の守り神だった「アオダイショウ」

  今回はヘビの話をしたい。苦手な人も多いと思うので写真についてはすべて下の方にまとめてみた。

 

 ある高校に勤務していた時、用務員の人が、配電盤の中にマムシ(図1)がいると飛んできたことがある。

マムシがそんな所にいるはずがないと思いながら見に行くと、アオダイショウであった(図2)。

ヘビ嫌いな人には、なんでもマムシに見えるだろうなと思いながら、捕まえてしばらく生物室で飼ってみた。

生卵を与えながら観察していたある日の朝、水槽から逃げ出していなくなっていた。

びっくりして必死に探し回ったがいない。

生物部の生徒や先生たちがアオダイショウはどうしたの?と聞きに来る。

みんなには可哀そうだから逃がしたと言い、誰もいないときに部屋中を捜しまわった。

何日もの間、捜しまわったが見つからない。

授業の時に出てきたらどうしようと心配だった。

特に、掃除の時間は気を使った。

2週間ぐらいたち、「きっとこの部屋から出て行ったのだ」と自分に言い聞かせ忘れようとしたとき、きれいな抜け殻が見つかった(図3)。

再捜索が、みんなにばれないように始まった。

再度、「頼むからみんながいるときには出てこないでね」という祈りの日々も始まった。

数日後、洗い場の植木の所でとぐろを巻いてゆっくりしている姿を見つけた。

その姿を見たときは、本当に嬉しくて、すぐに首根っこを捕まえ、みんなに見つからないように敷地外の森の中に「また会えてよかったね。お疲れさま」と逃げてもらった。

数人にしか話していない思い出である。

ちなみに、そのときの抜け殻は、今でも標本箱の中にある。

 

 昔の人にとって最も身近なヘビといえば「アオダイショウ」であろう(図4)。

他のヘビに比べ、腹部のうろこを上手に使って垂直な壁も登れるので、餌の豊富な天井裏や木の上にも自由に行くことができる(図5)。

長崎の方言では「いえぐちなわ(家にすむヘビ)」とか「ねずみとりぐちなわ(ネズミを捕ってくれるヘビ)」と呼ばれていた。ちなみに、「くちなわ」とはヘビの長崎方言である。

ネズミは、貯蔵している穀物等を食い荒らす害獣として農家の大敵だったので、それを退治してくれるアオダイショウは、まさに「家の守り神」であった。

私は高校卒業までは農家の我が家で育ったので、家でアオダイショウを見ることも多かった。

専業農家の我が家にはいろんな動物たちが共生していた。

その中でも強く印象に残っているのがアオダイショウである。

天井板がなかった天井からアオダイショウが落ちてきたこともあるし、家に入り込む姿を見たこともある。

特に、稲藁を保存しておく小屋で多く見かけた。

そんな時、びっくりして父に報告すると、大事なヘビだからそのままにということを話してくれたことを覚えている。

しかし、最近の人家はネズミもいなくなり、ヘビの入り込める隙間もないので、今は野外が生活の中心になっている。

 

 アオダイショウは、日本最大のヘビで、大きくなると2m以上にもなる(図6)。

一度、腕に巻きつかせて喜んでいたことがあるが、腕がなんとも青臭くなり、いつまでも臭いがとれなかったことを覚えている。

アオダイショウの「アオ」という言葉は青臭いことからきているのではないかと思った。

「何mもある大蛇を見た」という大蛇伝説をよく聞くが、私も、ずっと前、山の中で体長2m程の腹部が腕の太さもある(ノウサギの子どもを飲み込んでいた)アオダイショウに出会ったときは、本当に大蛇に見えてしまった。

その時、ヘビ嫌いな人がこれを見たら、きっと体長10mもある大蛇として噂されることだろうなと思った。

 

 アオダイショウの子供(図7)は親とは似つかない色合いをしている。

ヘビのことが分かってくると間違うはずもないのだが、マムシにそっくりというのだ。

もしかしたら、マムシという毒蛇に似ることで身を守っているのかもしれないが、そのせいでむやみに殺される現実もある。

 

 こんな経験もある。

朝早くに調査をしている時、木陰にいるアオダイショウを見つけた。

普通ならすぐに逃げ出すのにジーとしている。

静かに目の前まで行き、写真撮影の後(図8)、頭をコツンとたたいたらびっくりして逃げて行った。

きっと寝ていたのだろう。

瞼のないヘビは目を開けて寝るしかないので、静かに近づく私に気づかず、たたかれてびっくり。

慌てふためくその顔を思い出すたびににやけてしまう。

そんなヘビたちを見ることが極端に減ってきた。

調査をしながら野山を歩くことが多いけれど、たまにしか見なくなってきた。

個人的には、アオダイショウの姿を見たときはいい場所だなと嬉しくなってくる。

 

 

 ヘビの抜け殻を財布に入れるとお金がたまるという言い伝えがある。

だからではないが、ヘビの抜け殻を見つけると嬉しくなってすぐに拾ってしまう。

特に、目のレンズまできれいに残っている全身完全なものは貴重で珍しいと思う(図9)。

どれだけの抜け殻が標本箱にあるだろう(図10)。

お金は欲しくてたまらないが、人様に抜け殻を提供しても、自分で入れたことはない。

お金がたまらないのはそのせいかもしれない。

 

図1.五島市で撮影したニホンマムシ

 

図2.長崎市で撮影した配電盤の中のアオダイショウ


図3.長崎市で撮影したアオダイショウの抜け殻


図4.西彼杵郡長与町で撮影したアオダイショウ

 

図5.佐世保市で撮影した水抜き穴に潜むアオダイショウ

 

図6.諫早市で撮影した体長2m越えのアオダイショウ

 

図7.西彼杵郡長与町で撮影したアオダイショウのこども

 

図8.西彼杵郡長与町で撮影した寝ていて逃げないアオダイショウ

 

図9.諫早市で撮影した目まできれいな抜け殻

 

図10.標本箱の中の抜け殻(ヘビの種類はいろいろ)