クサガメの名前の由来が本当にくさい臭いを出すからと理解したのは壱岐の島で調査中のことであった。
捕獲したクサガメを車に乗せての運転中、突然の異臭に、急ブレーキを踏んだことがある。
他では嗅いだことがないこの臭いは、「若葉が腐食したような青くささ」という表現だろうか。
びっくりしてカメさんは水田に放り投げてしまった。
首に草色の模様があるクサガメ(壱岐で撮影)

クサガメの名前の由来は、「くさい臭いを出すから」とか「首に草色の模様があるから」と言われているが、私は絶対にくさい臭いの方だと信じている。
クサガメの長崎方言に『へくうず』(『へ』はおなら、『くうず』はカメのこと)がある。
昔からこの臭いはよく知られていたのだろう。
しかし、これはおならではなく、四肢のつけねにある臭腺から分泌物で、身を守るためのものらしい。
クサガメ(佐世保市宇久島で撮影)

クサガメは、本州・四国・九州に広く分布するが、朝鮮半島や中国大陸にも生息する。
近年の研究で、昔から日本にいたカメではなく、江戸時代以降に大陸から持ち込まれた移入種であることが分かってきた。
しかし、今では、すっかり定着し日本の景色に馴染んでいる。
日本在来ではなく外来種である証拠として、①日本ではクサガメの化石は見つかっていない。②中国大陸や朝鮮半島にも生息している。③シーボルトの標本をもとに作成されたファウナヤポニカには掲載されていない。などがあるそうだ。
現在の長崎県では、クサガメが最も多く、次いで、ミシシッピアカミミガメ、スッポン、ニホンイシガメの順である。
五島列島の福江島にはニホンイシガメもいるが、県本土や壱岐・対馬・平戸などの島々で見かけるカメはほとんどがクサガメである。
ただ、都市部の河川や池は条件付き特定外来生物に指定されたミシシッピアカミミガメが優占している。
水田のクサガメ(対馬で撮影)

木の上で日向ぼっこ(長崎市で撮影)

若いクサガメは甲羅の縁が金色なので「金線亀」とも言われ、ペット屋さんでは「ぜにがめ」名前で売られている。
クサガメの赤ちゃんだが金線はよく見えない(壱岐で撮影)

人にもよく慣れるので、ペットとして最高と思う。
長崎北高に勤めた時、生物室でクサガメを飼育していた。
人好きなカメで、来る人の後を追い回し人気者だった。
現在、長崎女子短の私の研究室でもクサガメを飼っており、私が部屋にいるときは水槽から出して放し飼いにしている。
私のもとにきたこのカメは、ゼミ生が保護したもので、前足としっぽを誰かにかじられ傷だらけの状態であった。
しばらくの間、消毒をしながら清潔な場所で育てていたら傷もよくなり元気になった。
名前は、ズタズタボロボロの状態でやってきたので、ゼミ生一同の合意のもと「ズタボロちゃん」と決まった。
今では、元気に部屋の中を歩き回っている。
ちなみに、真っ黒い個体なので首筋の草色の模様は見えない。
カメについての講義中、教室内を自由に歩き回らせていたらすごい臭いを出したこともある。
その時のズタボロちゃんの気持ちは分からないが、学生全員が名前の由来を分かってくれた。
色の黒いズタボロちゃん(研究室の水槽の家で)
