「カエル」と聞いて、私達が普通に思い浮かべるのは、雨が降りそうになると鳴き出す「ニホンアマガエル(アマガエル)」ではないだろうか。
ニホンアマガエル(対馬市で撮影)

吸盤を持つこのカエルはどこにでも行くことができる。
台所や勉強部屋の窓の縁、自動販売機・街灯の近くなど、水がないところでも平気で、割と我々の身近な場所で生活している。
灯りに集まってくる虫を食べるのが目的だが、時々、競争相手のヤモリと鉢合わせすることもある。
じっと観察してみると結構おもしろい。
自動販売機横に集まっているアマガエル(壱岐市で撮影)

カエルの中では小さい方だが、その鳴き声は最大級。
初夏の田植え頃、繁殖期を迎えると大合唱が始まる。
鳴のう(のどにある袋)を精一杯に膨らませて鳴く雄の姿は、写真でもお分かりのように実にユーモラスだ。
カエルの声がうるさくて眠れないということを聞いたことがあるが、その声の主は大体がアマガエルである。
雄が雌を誘うための必死のラブコール。
うるさいなどと言わずに、雄の必死の思いを感じて激励していただきたい。
鳴のうを膨らませて鳴くアマガエル

水田で鳴くアマガエル

やがて、抱接して産卵ということになる。
初夏、長崎の平地の水田にいるオタマジャクシはアマガエルかヌマガエルである。
アマガエルのオタマジャクシは、背中に大きな黒い斑点があることや上から見ると両目が離れているので比較的分かりやすい。
ちなみに、ヌマガエルは目が中央に寄っている。
抱接したアマガエル(壱岐市で撮影)

アマガエルのオタマジャクシ

アマガエルのオタマジャクシ(雲仙市で撮影)

アマガエルは体色変化が有名だ。
緑色から焦げ茶色まで変化し、灰色のような色にもなる。
これは皮膚にある3種類の色素胞(黄色素胞・虹色色素胞・黒色素胞)の影響らしい。
今までに見つけた体色変化のいろいろを紹介したい。
斑紋の出たアマガエル(南島原市で撮影)

岩の色にそっくりのアマガエル(佐賀県で撮影)

白っぽいコンクリートの上のアマガエル(佐賀県で撮影)

コケの上のアマガエル(模様がコケと全く同じ)

板の壁にいるアマガエル(大村市で撮影)

黄色や青いカエルが見つかったというニュースが新聞で紹介されることがある。
このカエル、アマガエルのことが多い。
自由に変化する体色変化とは異なり、突然変異によるもので、黄色いカエルは黄色いまま青いカエルは青いままである。
ただし、青いアマガエルは時間がたつと青ではなくなり茶色っぽくなる。
私の飼育中の青いアマガエルも茶色っぽくなってしまい、あんなに美しかったのにと詐欺だと叫んでしまった。
黄色いアマガエルはいつまでも黄色である。
皮膚にある3層の色素胞のどれかがだめになると、普段のアマガエルでは見られない黄色や青のカエルとなって出現する。
私もアマガエルの突然変異個体を飼育したことがある。
黄色いアマガエルは九十九島水族館から、青いアマガエルは長崎バイオパーク(2匹)から提供いただいた。
黄色のアマガエルは飼育を継続できなかったが、青いアマガエルは現在も飼育中であるが、いただいた時の青の美しさはない。
黄色いアマガエル(2017年、佐世保市で採集。研究室で撮影)

青いアマガエル(2020年西海市で採集。研究室で撮影)

飼育中に青色がなくなり茶色くなった青いアマガエル

左から緑の、体色変化の、青いアマガエル(左2個体は長崎市採集、右の青いアマガエルは西海市採集)

なお、黄色のアマガエルは長崎のペンギン水族館で飼育されている。
私の青いアマガエルをペンギン水族館に持って行き、青と黄色と普通の緑の記念撮影をしたことがある。
青いアマガエルは「幸せを呼ぶ青いアマガエル」として、黄色いアマガエルは「黄金色に輝く美しいアマガエル」として紹介されることが多いが、本物を見ていると本当にそう思ってしまう。
本物のアマガエル(左から緑色、青色、黄色のアマガエル(ペンギン水族館で撮影))

本物そっくりのフィギアのアマガエル(黄色、青色、緑色)

アマガエルのフィギアの中に本物が一匹(中央の黄色いアマガエルが本物)

ちなみに、この現象は、いろいろなカエルで見られる。
私が今までに飼育したことがあるのは、シュレーゲルアオガエル、ウシガエル、チョウセンヤマアカガエルである。
いずれ紹介したい。
アマガエルの正式名称はニホンアマガエルである。
日本全域ニホンアマガエルといわれていたが、2025年、東日本(近畿地方が境目になる)の個体は遺伝的に異なるということで「ヒガシニホンアマガエル」という名前で新種記載がなされた。
これで、日本に生息するアマガエルの仲間は、南西諸島のハロウエルアマガエル、西日本のニホンアマガエル、東日本のヒガシニホンアマガエルの3種になった。
長崎県は、西日本にあるので今まで通りに「ニホンアマガエル」ということになる。
両種の判別は非常に難しいそうなので、我々は、見つけた場所で判断するしかないだろう。
実は、私も、このアマガエルの研究に協力させていただいた。
全国のアマガエルを調べているということで、長崎県内の数か所で採集し研究者に送った。
自分の送ったカエルも研究の一部として利用されたので、この成果は嬉しいものであった。
くつろいでいるニホンアマガエル(雲仙市で撮影)

最近、この愛らしいアマガエルが減っている気がする。
みなさんの所ではどうだろうか。
どこにでもいたカエルがたまに出会うカエルになるのは寂しいこと。
アマガエルが絵本やアニメの世界のカエルではなく、いつでも触れ合えるカエルであって欲しいと願っている。