ヤドリギ(宿り木)という植物、個人的な感想だが、いい名前だなと思う。
植物の名前というのは、その植物の特徴をつかんで名前が付けられているので味がある。
その点、カエルなどは、すべて、「なんとかガエル」。
味気ないなと思ってしまう。
長崎ケーブルテレビの番組で、「ヤドリギって知ってる」という番組を作成し放送した。
2024年11月のことである。
それまでの私の知識は、上五島でツバキに寄生したヒノキバヤドリギを見たことがあるという程度だった。
番組を作るにあたり、植物専門の先生にお願いし、大村市にある大村公園で取材した。
2種のヤドリギを見ることができたが、あまりにも普通にたくさんあるのでびっくりしてしまった。
何回も来たことのある公園だが、こんなにたくさんのヤドリギがあることを全く知らなかったからだ。
いつも、下ばかり見て歩いていたことを反省。
その後、県内各地のヤドリギを捜して回ったが、いろいろな場所で発見できた。
ヤドリギというのは、意外と普通にある植物であった。
ちなみに、ヤドリギという言葉は、ヤドリギの仲間の総称でもあり、ヤドリギという一種でもある。
大村公園のオオバヤドリギ(サクラに寄生、24年1月13日に撮影)

大村公園のヤドリギ(サクラに寄生、24年3月30日に撮影)

ヤドリギという名前の由来は、「他の木に宿る(寄生する)」ということだろう。
名前の通り、この仲間は、他の植物にくっつき水や養分をもらうという寄生植物である。
しかし、ヤドリギが普通の寄生と異なっているのは、自らも緑の葉を持ち光合成ができるという点。
そのため、ヤドリギの仲間は半寄生常緑植物と呼ばれている。
簡単に説明すると、半分くらいは寄生した樹木から水や養分をもらうけど、残り半分くらいは自分でも光合成ができる、という都合のいい植物になる。
長崎県には4種のヤドリギの仲間が分布するが、普段道路沿いや公園・神社などで見かけるのは3種である。
広めの葉っぱを持つオオバヤドリギ。
細い二枚の葉を出し、全体として鳥の巣や宙に浮くマリモのような丸い形を作るヤドリギ。
ヒノキの葉に似たヒノキバヤドリギである。
最後の一種はマツグミという名前であるが、多良山系の一部でしか見られないとのこと。
大村公園のオオバヤドリギ(サクラに寄生、24年3月30日に撮影)

雲仙市国見町のヤドリギ(24年2月18日に撮影)

長崎市諏訪神社のヒノキバヤドリギ(ツバキに寄生、24年3月15日に撮影)
多良山系のマツグミ(ツガに寄生、24年10月29日に撮影) 中央の黄緑の葉がマツグミ

長崎県に分布するヤドリギのなかま4種のうち、代表はそのうちの一種ヤドリギであろう。
西洋では、冬も枯れずに丸い緑の塊を成すことから幸せをよぶ木とされ、クリスマスなどには玄関に飾るという。
大村公園のヤドリギ(24年5月1日に撮影) 中央付近の濃い緑の部分

大村公園のヤドリギ(サクラの木に寄生、24年3月30日に撮影)

ヤドリギを観察するには冬が最適。
夏は樹木の葉が茂り見つけにくいが、冬は落葉しているので簡単に見つけることができる。
大村教育センターのヤドリギ(24年3月30日に撮影)葉がないのでヤドリギが分かりやすい。

大村教育センターのヤドリギ(24年5月3日に撮影)葉があるのでヤドリギが分かりにくい。

ただ、常緑樹に寄生している場合は難しいかもしれない。
落葉樹につくことの多いオオバヤドリギとヤドリギは、その場所だけが青々としているから分かりやすい。
おすすめは大村公園。
公園内のいろいろな木で、オオバヤドリギとヤドリギが見られる。
一方、ヒノキバヤドリギは、常緑樹であるヤブツバキなどに寄生し、あまり大きくならないので見つけにくい。
多良山系ではソヨゴに、長崎市にある諏訪神社の境内ではサザンカやツバキに寄生していたが、長崎県内各地を本気で捜せばもっと見つかるに違いない。
長崎市諏訪神社のヒノキバヤドリギ(24年3月15日に撮影)

多良山系のヒノキバヤドリギ(24年10月29日に撮影)

長崎県内各地でヤドリギを見て回ったが、特に素晴らしくぜひとも見ていただきたいのが島原城のヤドリギである。
天守閣そばの高い石垣の上にある立派な桜の木。
そこに見事なヤドリギが寄生している。
1月の葉っぱ一つない季節、4月の桜の花が満開の季節、緑の葉に覆われた夏から秋の季節、それぞれに見ごたえがあるので足を運んでいただきたい。
冬の島原城のヤドリギ(25年1月11日に撮影)

春の島原城のヤドリギ(24年4月7日に撮影)

夏から秋の島原城のヤドリギ(24年10月14日に撮影)

源氏物語の54帖の巻名の一つに「宿木」というのがある。
昔から有名な木だったのだろう。
長崎県でもいろいろな場所に分布しているので、葉の落ちた冬場に、ヤドリギ捜しのドライブというのもいいものですよ。