爬虫類を食べる爬虫類「シロマダラ」

 ヘビの話題が時々ニュースになることがある。

今回紹介するシロマダラもよく取り上げられ「絶滅危惧種の貴重なヘビが我が家の庭にいた」というニュースになる。

全国の多くの県で絶滅危惧種に指定されており、長崎県も同様である。

私もずっと珍しいヘビと思っていたが、最近は夜行性のため見つかりにくいだけのように感じている。

夜の山中で見つけたシロマダラ(2001年6月、諫早市富川で撮影)

 

 シロマダラは、名前の通り「白いまだら模様のあるヘビ」。

でも、どちらかというと白いというより茶褐色のまだら模様になっている。

体長は大人になっても60㎝程度の小型で、細い胴体と大きな頭。

見た目はかわいくスマートだが、結構攻撃的なヘビである。

このヘビの一番の特徴は、トカゲやヤモリや小型のヘビを餌とする爬虫類食のヘビであることだろう。

 シロマダラは、日本の固有種で全国に広く分布する。

長崎県では、県本土はもちろんのこと、対馬を除く多くの島嶼で確認されている。

絶海の孤島、男女群島女島にも生息。

餌であるヤモリやトカゲなどの爬虫類が多いためであろう。

もしかしたら、トカゲやヤモリがいる島ならどこにでも生息しているのかもしれない。

つい先日のこと、西海市大島町にすむ教え子からラインが入った。

「我が家の庭にシロマダラらしいヘビがいる」とのこと。

早速写真を送ってもらった。

立派なシロマダラであった。

 

シロマダラ(茶褐色と黒のまだら模様、1995年8月、諫早市多良岳で撮影)

 

シロマダラの写真(1987年、男女群島女島産、女島灯台守の方から提供)



 シロマダラを初めて見たのは教員になって間もないころの壱岐の島だったが記録や写真は残っていない。

その頃は、教員になったばかりで調査などということは考えてもおらず、日々の教員生活に必死だったからである。

2回目に見たのは、長崎南高に転勤してからすぐの歓迎遠足の時だった。

学校近くの市民の森。

弁当を食べた後、近くにあった大小さまざまな石をはぐって何かいないかと捜していた時、ちょっと大きめの石の下にヘビがいた。

びっくりした顔でこちらを見つめていたが、相手に逃げる隙も与えず夢中で捕まえた。

めったに見ることのできないヘビ、シロマダラであった。

その頃は、長崎県の爬虫類の調査も開始していたので生物室で飼育し観察した。

生きたシロマダラの飼育は面白かった。

普段はおとなしいのに、何かの折に攻撃的になり、口を大きく開けて威嚇し噛みついてくる。

ある日、毒がないと分かっていたので、安心して触っていた時噛まれてしまった。

初めてヘビに噛まれた。

痛くはなかったが、ちょっとショックだった。

ヘビの頭にデコピンをしてしまった。

餌のトカゲを与えると、追いかけ回した後、腹部に噛みつき、体を巻き付けて飲み込んだ。

飲み込むまでにはかなりの時間がかかったので、気づいたら食べていたという感じであった。

そして、ある日、3個の卵を産んでくれた。

本人は、すぐ側でとぐろを巻いていたので卵を守っているように見えたが、ヘビ類はだいたいが産みっぱなしなので、卵を別の容器に入れふ化を待つこととした。

残念ながらふ化には失敗してしまった。

後で考えると、湿気が少なかったようである。

 

シロマダラ(1989年4月、長崎市市民の森で撮影)

 

シロマダラと3個の卵(1989年7月1日、生物室の水槽内で撮影)

 

シロマダラの卵(1989年7月1日、生物室水槽内で撮影)

 

 私が、昼間の調査で一番見かけたのは、海岸の岩場や山中にある建築物の隙間でヤモリ調査をしていた時である。

ヤモリ調査は、岩場や建築物の隙間を懐中電灯で照らし確認する方法をとっている。

その割れ目で何回もシロマダラを見た。

多分、そこにいるシロマダラの目的は私と同じであろう。

ヤモリである。

狭い隙間なので写真を撮ることも難しいが、2枚ほど紹介したい。

1枚目は、佐世保市の黒島(世界遺産の黒島天主堂がある)で撮影したもの。

海岸の岩場でニシヤモリの調査中のことだった。

隙間にある白い卵塊はニシヤモリのもの。

ニシヤモリはいなかった。

この隙間にいたニシヤモリは食べられたのか、うまく逃げ切ったのか。

この時のシロマダラは長時間うごかなかったので寝ていたのかもしれない。

 

シロマダラがいた海岸の岩(2020年4月、佐世保市黒島)

 

シロマダラとニシヤモリの卵(2020年4月、佐世保市黒島で撮影)



 もう一つは、雲仙岳の道路脇にある古い案内板の隙間である。

ここでもかなりの時間見ていたが動かなかった。

ここにもヤモリの卵塊はあったので餌狙いなのだろう。

両方とも、あまりの動かなさにしびれを切らしてしまい、枝でつついてみた。

慌てることもなくゆっくりとした動きで奥の方に引っ込んでしまった。

眠りを邪魔されて怒っていただろうなと思う。

 

シロマダラがいた案内板(2021年9月、南島原市で撮影)

 

隙間にいたシロマダラ(2021年9月、南島原市で撮影)


 

 若くてまだまだ元気だったころ、夜の森林内の山道を一人でゆっくりとドライブすることが多かった。

とくに、小雨の降る夜や雨上がりの道路は生き物の展示場。

両生類では、カスミサンショウウオやアカハライモリ、ヒキガエル、ニホンアカガエル、タゴガエル、シュレーゲルアオガエルなどなど。

ブチサンショウウオに遭遇したこともある。

爬虫類としては、マムシが一番多く、たまに、シロマダラ、そして、一度だけタカチホヘビを拾った。

タヌキやイノシシなどの獣との遭遇も多い。

何回も山のドライブをしていると、道路上の物体が、枝なのかヘビなのかが分かってくる。

シロマダラだろうと思って車を止め、降りてシロマダラが確認できた時は、俺ってすごいと自分で自分をほめてしまう。

 

夜の道路上のシロマダラ(2003年10月、東彼杵郡川棚町で撮影)

 

 多くの人から、夜の山道の一人のドライブは怖くないかと聞かれるが、不思議と怖くないのである。

ただひたすら道路上の生きものに集中しているので周りを見る暇がないからだろうか。

車を降りての歩きの調査でも同じだったように思う。

怖さより何がいるかなという興味の方が勝っていたのだろう。

それでも、夜間、山中で人に会うこともあり、それが一番怖かった。

多分、相手も同じ。

お互いに「こんな夜に、こんな場所で、何しているんですか」と聞きあった。

 

シロマダラ(1990年6月、東彼杵町龍頭泉で撮影)


 シロマダラは、自然の中で生きている姿を見ることは難しい。

それでも、夜間の交通事故による早朝の轢死体はよく見つかる。

しかし、昼頃になると、カラスなどに食べられてしまうためかほとんど発見できない。

カラスとの勝負に負けることが多いが、自然界に無駄はないようだ。