ヘビってどうしてみんな苦手なのだろう。
そういう私もどっちかというと多くの動物たちの中では苦手な方になる。
調査の折、どうしても捕まえるためにしっぽを踏みつけることがあるが、口を開けて襲い掛かってくる。
噛まれたこともある。
ヘビからすれば、踏みつけたり捕まえたりするから仕方なく攻撃するのであろうが、やっぱり苦手である。
そんな中、これから紹介するヘビは、非常におとなしく触っても握っても噛みついてこない。
いいやつである。
そのヘビの名前はジムグリ。
ジムグリの成体(2003年9月、平戸市的山大島で撮影)

長崎県本土に生息する8種のヘビの仲間で「ジムグリ」はあまり知られていない。
野外調査をしていても出会えることは稀で、出会えた時にはラッキーと思ってしまう。
ただ、秋の山道では生まれたばかりの幼体を見かけることはある。
私が通っている長崎女子短大の構内でも幼体を見つけたことがあるので、気づかないだけで畑地や里山には多いかもしれない。
ジムグリの幼体(1994年10月、諫早市高来町で撮影)

ジムグリという名前は、地下に潜ることから名付けられたらしい。
漢字で書くと『地潜り』となるのだろう。
つまり、地下にすむヘビということになりそうだが、自ら穴を掘るのではなく、モグラのトンネルなどを地下の穴を利用し、その中にいるネズミなどの小型哺乳類を捕食しているようだ。
ただし、私自身は地上での目撃しかないので(地下の姿は見たことがない)、どのくらいの地下を利用しているのかはわからない。
30年ほど前、農家の人対象にヘビの方言を調査したことがある。
ジムグリの写真を見せると農家の多くの方々が見たことがあるといろいろな話をしてくれた。
農家の人にはよく知られたヘビだと感じた。
ジムグリの成体(2018年11月、壱岐市石田町で撮影)

方言もいろいろあり、「おべら」(佐世保市南風崎町)、「じもち」(諫早市高来町)、「あかびら」(雲仙市国見町)、「あぜひき」(大村市黒木町)・・・などがでてきた。
何となく、ジムグリの姿や生態を表してる方言だなと感心してしまう。
どんなヘビですかという質問をすると、「畑を耕している時に土の中から出てくることがある」とか「木に登って小鳥の巣を襲う」ということだった。
諫早市轟の滝付近でヤマネの巣箱調査を行ったことがある。
一度だけだが、巣箱の中にジムグリが入っていた。
巣箱のふたを開けたらド派手なヘビが入っていたので、びっくりして見入ってしまった。
ジムグリの方も、びっくりして私の方を見つめていた。
巣箱の中に入ってくるヤマネかヒメネズミを狙ってのことだろう。
ヤマネの巣箱調査(この巣箱ではないが、中にジムグリが入っていた)

樹上のジムグリの幼体(1995年11月、諫早市轟の滝で撮影)

ジムグリの成体の体長は1m弱程度で中型のヘビ。
見ただけで恐怖を感じる大きさではない。
ジムグリの特徴は、県本土に生息する8種の中では目立った色合いをしていること。
特に幼体の色は派手で毒々しい感じがする。
親になると派手さは減少し枯れ葉に同化していくが、お腹の色は赤と黒の市松模様の派手な色合いのまま。
ヘビのことを詳しく知らなかった昔は、赤地に黒い斑点の幼体を毒ヘビかもと思い、マムシ同様に首根っこを強く掴んで扱っていた。
しかし、触れ合うにつれ、おとなしくいいやつであることが分かってきたので、今ではやさしく手のひらで遊ぶことにしている。
ジムグリの幼体(2011年10月、新上五島町で撮影)

ジムグリの成体(1988年4月、諫早市轟の滝で撮影)

ジムグリの腹部の市松模様(1988年4月、諫早市轟の滝で撮影)
長崎県では、対馬を除く県内全域(島も含む)に広く分布しているが、めったに出会うことはない。
もし、このヘビと遭遇できたら、そっとしっぽをつかみ腕に巻き付けて遊んでみたらどうだろう。
何回か遊んだことがあるが、ヒンヤリした感じで気持ちがよかったことを覚えている。
アオダイショウやシマヘビでは、そんな感情は沸いてこなかったので、私にとっては特別なヘビなのかもしれない。