長崎ペンギン水族館は、ペンギンに特化した水族館で世界最多の9種類のペンギンを飼育展示している。
名前の通り、ペンギンが目玉の水族館だが、私は別の目的でよく通っていた。
それは、一般には公開されずバックヤードの大きな水槽の中にいたチュウゴクオオサンショウウオである。
今のペンギン水族館は2001年に旧長崎水族館がリニュアルオープンしたものである。
昭和から平成の初期、旧長崎水族館には遊園地もあり子供と一緒によく通っていた。
私の記憶では、旧長崎水族館の庭園の一部に大きな水槽が設置され、大きなオオサンショウウオが展示されていた。
みんなの注目は少なかったが、私個人としては泰然自若でほとんど動かないその姿に見惚れていた。
その時に見たオオサンショウウオは、ペンギン水族館がリニュアルしてからは、みんなに見られることもなくバックヤードで静かに暮らしていた。
長崎ペンギン水族館

長崎ペンギン水族館内のフンボルトペンギン

バックヤードで飼育されていたチュウゴクオオサンショウウオ

2017年に京都にある京都水族館に行ったとき、たくさんのチュウゴクオオサンショウウオや日本のオオサンショウウオとの交雑種が展示されているのを見た。
日本最大級とかの説明を見ながらも、心の中ではペンギン水族館の方がもっと大きいなあと思っていた。
チュウゴクオオサンショウウオとオオサンショウウオの交雑種(2017年1月、京都水族館で撮影)

チュウゴクオオサンショウウオとオオサンショウウオの交雑種(2017年1月、京都水族館で撮影)

2019年8月、ペンギン水族館のスタッフの方から、日本オオサンショウウオの会の方がチュウゴクオオサンショウウオの身体測定に来られていると聞き急いで訪問した。
まさに、身長体重の測定である。
そこで得た情報は次のとおりである。
測定結果は、全長158.5cm、体重41.1kgであり、身長169cmのスタッフの人と並んで取った写真でもその巨大さがご理解いただけると思う。
このオオサンショウウオは1977年(昭和52年)6月20日、旧長崎水族館が業者より購入した中国産のオオサアンショウウオで現在まで飼育は継続している。
ちなみに、購入時は全長66cm、体重15kgであり、この40年で全長でも体重でも約2.5倍近くに成長したことになる。
チュウゴクオオサンショウウオの身体計測(2018年11月、長崎ペンギン水族館で撮影)

スタッフ(身長169cm)と並んだチュウゴクオオサンショウウオ(2018年11月、長崎ペンギン水族館で撮影)

その時に聞いた話だが、この個体は、日本の施設で飼育されている日本のオオサンショウウオ、チュウゴクオオサンショウウオ、その雑種を含めても最大サイズということだった。
ペンギン水族館にいるチュウゴクオオサンショウウオのことを自慢して回っていたら、同年11月、急に死んでしまった。
スタッフの話によると、その一週間ほど前から下あごが腫れ体調を崩していたので、専門家に相談しようとしていた矢先のことだったらしい。
日本一とも世界一ともいわれるほどの大きさだったのに残念でたまらない。
死んでしまったチュウゴクオオサンショウウオの遺体は北九州にあるいのちの旅博物館に運び込まれ標本となった。
2024年のカエル展の際にはその標本も展示されるとのことで、久しぶりに会いに行った。
標本として展示されていたチュウゴクオオサンショウウオ(2024年9月、北九州市立いのちのたび博物館のカエル展で撮影)

私は水族館のバックヤードでこの巨大な姿を見るたびに、井伏鱒二著の短編小説『山椒魚』のことを思っていた。
彼の代表作でもあるこの小説は、「山椒魚は悲しんだ。」で始まり、「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ。」で終わるわずか数ページの短編であるが、成長しすぎて自分の棲家である岩屋から出られなくなってしまった山椒魚の嘆きをユーモラスに描いている。
水族館でのサンショウウオの生活空間は、長さ2m、幅1m、高さ1mの水槽の中であり、体長1.59mにもなる大きさでは自由に動き回ることは不可能だし、小説の中のサンショウウオと同じような想いに駆られていたのではないかと勝手に思っていた。
オオサンショウウオ(2017年2月、山口県で撮影)
