長崎ケーブルテレビの私のコーナーでソテツの番組を作ることになった。
放送日は夏の予定。
私の世代は、ソテツ(蘇鉄)というとどうしても次のような歌を思い出してしまう。
赤い蘇鉄の 実も熟れる頃
加那も年頃 加那も年頃
大島育ち
田畑義男・三沢あけみ・中曽根美樹など多くの歌手が歌った『島育ち』という歌である。
誰も知らないだろうなと思うが、私はソテツを見ると知らぬ間に口ずさんでしまう。
ソテツは熱帯・亜熱帯性の植物で長崎県には自生していない。
北限は鹿児島県や宮崎県南部、高知県足摺岬といわれている。
長崎県でも多くの場所で見ることができるが、それらはすべて植栽されたものである。
江戸時代から全国的に持ち込まれ、権威の象徴として、寺院や古い役所や学校などに植えられていた。
夕日が丘そとめのソテツ(長崎市、26年4月に撮影)

グラバー亭のソテツ(長崎市、2026年3月に撮影)

番組を作る際に、カトリック教会とソテツの間に深い関係があることが分かったので、今回はそれを紹介したいと思う。
大浦天主堂のシスターや出津教会・田平教会・中町教会の方々に聞いたことをまとめたものが下の文章である。
もし、表現に誤りがあったらお許し願いたい。
2026年4月5日の日曜日は、カトリック教徒にとって大切な行事である「復活祭」であった。
イエス・キリストの復活を祝うキリスト教最大の行事だそうだ。
ただ、キリストの誕生を祝うクリスマスのように決まった日ではなく、春分の日後の最初の満月の次の日曜日ということで毎年変わっていくとのこと。
その1週間前の日曜日を『枝の主日(受難の日)』とよび、今年は3月29日がその日でであった。
その意味は、イエス・キリストがロバに乗ってエルサレムに入城した出来事を記念して、信者が枝をかかげて祝う祭日だそうだ。
長崎市にある中町教会でそのようすを見学させていただいた。
本来なら、シュロやオリーブの葉を使うそうだが、日本ではその代わりにソテツを使っているとのこと。
ミサでソテツの葉を持つ信者(長崎市中町教会、2026年3月29日に撮影)

ソテツの葉が飾られた十字架(長崎市中町教会、2026年3月29日に撮影)

だから、「枝の主日」の前日、教会内に植えてあるソテツの枝を切り、準備をするそうだ。
信者の方々は、教会が準備したソテツの葉を持って教会に入り、ミサが始まる。
このソテツの葉はミサ終了後、自宅に持ち帰り各家庭で飾るそうだ。
そして、1年後に教会に持ち寄り燃やすとのこと。
その灰を使って、「灰の水曜日」(今年は2月18日)のミサの日に、額に十字架のしるしをつけるそうだ。
説明を聞きながら、日本のカトリック教会の1年は、「ソテツに始まってソテツに終わる」という気がした。
カトリック教会にとってソテツは大変重要な植物のようだ。
だからだろう、どのカトリック教会にもソテツが植えられている。
昔から教会という建物には興味があり県内各地の教会を見て回っている。
特に、五島列島では、世界遺産の教会だけではなくほとんどの教会を見て回った。
その頃には、ソテツとの関係を知らずまったく気にかけなかったので、私のほとんどの教会の写真にソテツは写っていないが、よく見ると写っているものもあった。
ソテツを写していない頭が島教会(新上五島町、2017年5月に撮影)

ソテツを写していない江上教会(五島市奈留島、2012年9月に撮影)

教会横のソテツと堂崎協会(五島市福江島、2019年2月に撮影)

長崎市内にあるいくらかの教会を「枝の主日」の前と後で見学に行った。
ソテツに注目してみていただきたい。
まずは、国宝「大浦天主堂」。
階段中央の左手の広場にソテツはあった。
大浦天主堂とソテツ(長崎市、2026年3月7日に撮影)

刈り取られた大浦天主堂のソテツ(2026年4月3日に撮影)

二番目に黒崎教会。
階段を上った正門の両脇にあった。
黒崎教会とソテツ(長崎市黒崎町、2026年3月1日に撮影)

刈り取られた黒崎教会のソテツ(2026年3月30日に撮影)

三番目に出津教会。
教会横の土手の部分あった。
出津教会とソテツ(長崎市出津町、2026年3月1日に撮影)

刈り取られた出津教会のソテツ(2026年3月29日に撮影)

枝の主日のミサ終了後に残されたソテツの葉(長崎市出津教会、2026年3月29日に撮影)

長崎県内には有名なカトリック教会がたくさんある。
昔のことであるが、ソテツの葉がすべて切られ丸裸の状態を見たことがある。
その時は、何も思わず、ソテツだけ葉を一枚も残さず丸坊主にしてかわいそうだなあ感じたことを覚えている。
その素朴な疑問が今回の取材でやっと解けた。