浦島太郎という昔話や童謡がある。
童謡の一番は、「むかしむかし浦島は 助けた亀に連れられて、竜宮城へ来てみれば 絵にもかけない美しさ」である。
この昔話の中の「助けた亀」のように、ウミガメを助けて保護しのちに放流する場面に立ち会ったので、今回はその話をしてみたい。
時は、2022年5月23日のこと。
場所は佐世保市にある海きららである。
なお、これも長崎ケーブルテレビの取材で番組を作らせてもらった。
2022年の2月のこと、長崎県松浦市の海岸で釣り糸に絡まったアオウミガメが漁師さんに保護された。
釣り糸はうまく取り除くことができたがかなり衰弱していたので、海きららで保護し暖かくなってから放流することになった。
それから3ヵ月、放流日が5月23日との連絡を受け、我々取材班は海きららを訪問した。
水槽から出されたアオウミガメは元気いっぱい。
最後の身体計測が行われた。
放流前の最後の計測(2022年5月、海きららで撮影)

大きなプラ船に入れられたアオウミガメは、車に乗せられ、放流場所の松浦の海岸へ。
約30分の旅の後、プラ船に入れられたまま砂浜の場所まで運んだ。
車から水際までの距離はかなりあったが、スタッフと一緒に重たいアオウミガメを必死に運んだ。
その際、私の心の中に、亀の恩返しのおすそ分けをねらっていたのは確かである。
いよいよ放流。
砂浜の上に置かれたアオウミガメ。水際に置いたのにボーとして動かない。
海水に浸かる場所まで背中を押してあげてもポケーとしている。
ゆっくりと海の中に入っていった。
それほど名残惜しいのかと思っていたら、急に泳ぎだす。
その早いこと早いこと。
バタフライのように前あしを使っていた。
3ヵ月の保護生活からの解放である。
泳ぎだした後は、少しぐらい陸の私たちを気にしてくれればいいのに、振り返るでもなく、手を振ってくれるでもなく、足早に沖に向かい潜ってしまった。
あっけにとられるくらいの去り際の見事さであった。
去っていった沖の方を見ていたら、息継ぎのためか少しだけ頭を出したあとまた潜っていった。
私はお礼を言ってくれたのだと思い、心の中で「恩返しは何でもいいからね」とつぶやいていた。
図2.水際においたアオウミガメ(2022年5月、長崎県松浦市の砂浜で撮影)

図3.海水が来ても動かない(2022年5月、長崎県松浦市の砂浜で撮影)

図4.海の方に押してみた(2022年5月、長崎県松浦市の砂浜で撮影)

図5.海水の中に入り泳ぎ出す瞬間2022年5月、長崎県松浦市の砂浜で撮影)

長崎県近海で見られるウミガメは、世界に分布する7種のうちの5種にもなる。
しかし、身近なウミガメとしては、アカウミガメとアオウミガメの2種であろう。
アカウミガメは長崎の砂浜にも産卵のために時々上陸することがある。
アオウミガメは長崎近海の海を回遊しているだけで上陸することはないとのこと。
アオウミガメが上陸して産卵するのは主に南西諸島や小笠原諸島なので、長崎を含む九州本島で上陸することはない。
アカウミガメの産卵地は北太平洋では日本だけと聞いているので、長崎県を含む九州や本州の南半分でも産卵が見られている。
私も泳いでいるアオウミガメの姿を陸上から見たことが一度だけある。
30年ほど前、五島の男女群島に調査に行った際、目の前を優雅に泳いでいる姿を目撃した。
その時撮影したアオウミガメの感動の一枚である。
図6.アオウミガメ(1993年9月、男女群島女島の海岸で撮影)

昔話によると砂浜で子供たちにいじめられているカメを助けたとあるので、砂浜に上陸していたことになる。
とすれば、この話の主人公はアカウミガメということになるのだろうか。
さらに、上陸するのは産卵のためなので雌ということになる。
ということは、浦島太郎に出てくるカメ(砂浜で意地悪されていた)は、アオウミガメではないということになる。
今回の放流では玉手箱は期待できそうにもない。
まあ、意図的ではない状態で弱ったアオウミガメが砂浜に打ち上げられることもあるので、どっちでもいい事なのかもしれない。
それでも、生きものを扱っている身としては気になってしょうがない。
図7.アカウミガメ(2025年12月、長崎ペンギン水族館バックヤードで撮影)

図8.アオウミガメ(2022年5月、海きららで撮影)

長崎県に上陸したアカウミガメの卵を保護している人がいると聞き、子ガメの放流日に見に行ったことがある。
場所は南島原市加津佐町、時は1999年7月7日のことである。
人工ふ化されたたくさんの子ガメが砂浜におかれると、海を目指して一斉に歩き出す。
頑張れ‼頑張れ‼と心で叫びながら海の中までついていった。
アカウミガメの赤ちゃん(1999年7月、南島原市加津佐の海岸で撮影)

アカウミガメの赤ちゃん(1999年7月、南島原市加津佐の海岸で撮影)

今年の5月から始めたブログ、2025年内に49編をあげることができた。
まだまだネタの方はいくらでもあるので、来年も1週間に1回のペースで書いてみたい。
読んでいただいているみなさま、この1年間ありがとうございました。
よいお年をお迎えください。




























































