高貴なヘビ「タカチホヘビ」

 ヘビの姿が美しいという思う人は少ないかもしれないが、今回紹介するのは本当に美しい。

そのヘビの名前は「タカチホヘビ」。

発見者の高千穂宣麿男爵に由来している。

基本的にヘビの場合は、文章の途中に写真は入れず最後のまとめることにしているが、今回だけは途中に入れることをお許しいただきたい。

 

 体長50cm程度の中型ヘビで、体色は黄土色。

背中の中央に1本の黒い筋がある。

鱗は金属光沢があり、虹色に光って見える。

この鱗の美しさがこのヘビの特徴なのだ。

 

金属光沢が美しいタカチホヘビ(2001年8月に龍頭泉荘の庭で撮影)

 

体長50cm程度のタカチホヘビの全身(2001年8月に龍頭泉荘の庭で撮影)



 長崎県の爬虫類の調査をしている時、タカチホヘビは名前だけを知っている幻のヘビだった。

長崎県本土には8種類のヘビが生息している。

対馬には、別に2種類、そして、男女群島男島に1種類。

合計11種が長崎県に分布するヘビということになる。

最後まで撮影が難しいと思っていたのは、男女群島にいるダンジョヒバカリとタカチホヘビだった。

ダンジョヒバカリは、1993年に男女群島に調査に行く機会があり、撮影することができた。

最後に残ったのがタカチホヘビだったのだ。

何としても出会いたいと思って、夜の雲仙山系や多良山系の山道をドライブしていたが私の前には表れてくれなかった。

それほど、恋焦がれたヘビであった。

やっとこのヘビと出会えたのは1995年8月18日のこと。

当時、長崎南高校に勤務していた私は、3年生の学習合宿で諫早青少年自然の家に宿泊していた。

夕食の時間が終わっての休憩時間、何とか暇を貰い、山道をひたすら運転し続けた。

目的は、見たことのないタカチホヘビを捜すこと。

数日間、夜行性であるタカチホヘビが道路上に出てくることを祈りながら、ライトに照らされる前方だけを見つめて運転していた。

マムシやシロマダラは見つかるが肝心のタカチホヘビは見つからない。

何日目だったかは覚えていないが、8月18日の夜、やっと道路上でくつろいでいるタカチホヘビを見つけることができた。

喜び勇んで宿舎に持ち帰りみんなに見せたが、長崎南高の先生方の反応は冷たいものであった。

仕方がないとは思いながら、夜な夜な水槽に入れたタカチホヘビと触れ合っていた。

出会いたいと思っている動物に出会えた時の喜び、これは、出会いたいと思っているあこがれのスターに出会ったとき以上だと思う。

分かってもらえるかなあ。

 

初めて発見したタカチホヘビ(1995年8月に諫早市多良山系で撮影)

 

頭の金属光沢が美しいタカチホヘビ(1995年8月に諫早市多良山系で撮影)

 

手の上に置いたタカチホヘビ(1995年8月に諫早市多良山系で撮影)

 

ほぼ全身を撮影したタカチホヘビ(1995年8月に諫早市多良山系で撮影)

 


飼育を試みたが、まったく餌を食べてくれず、標本となってしまった。

優雅で高貴なこのヘビは、「おまえの餌を食べるくらいなら餓死を選ぶ」と言っているようで、その後は見つけても優しくなでて逃がすようにしている。

 

 

 一回目の遭遇には時間がかかったが、その後は、何回も出会うことができた。

道路上で轢死した死体が中心であるが、生きた個体は、友人の経営する東彼杵町千綿にある龍頭泉荘で発見してもらった2回だけである。

さすがは、龍頭泉の滝の麓、自然いっぱいの中にある「鯉・鰻・すっぽん料理の専門店」の庭である。

 

龍頭泉荘の庭で発見したタカチホヘビ(2001年8月に龍頭泉で撮影)


 

 2024年5月のある日いつものように遊びに行くと、捕獲された瀕死の状態のタカチホヘビがいた。

床下に置いたネズミ捕り粘着シートにかかり身動きできない状態。

何とか助けたいと思い、龍頭泉荘の娘さんたちといっしょに、必死でネバネバする粘着性のものをふき取った。

完璧には落とせなかったが、何とか動けるようだったので逃がすことにした。

しばらくすると、置いた場所からはいなくなっていたので、頑張って山の中に入っていったのだろう。

生きていることを祈りたい。

 

粘着テープのネバネバを取っているところ(2024年5月に龍頭泉で撮影)

 

粘着テープのネバネバを取ったタカチホヘビ(2024年5月に龍頭泉で撮影)



 タカチホヘビは、本州・四国・九州の山地に広く分布し、中国南東部にも生息しているらしい。

長崎県本土では最も見つけにくいヘビだが、極端に少ないわけではなく、人目につかないだけのようだ。

昼間は山地のやや湿ったガレ場の地中に潜み、餌のミミズを捕食している。深い落ち葉の下から見つかることもある。

たまに、地表に出てくることもあるが安全な夜間に限られる。

動きは実に緩慢で、つかんでもゆっくりと手にまとわりつくだけで咬もうともしない。

昼間の活動だったらすぐに天敵に襲われ絶滅するだろう、と思わせるかよわさを感じてしまう。

それでも、たくましく長崎の地で生き続けて欲しい。