2018年6月30日、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は世界遺産として登録された。
その多くの構成資産の中に「外海の大野集落」がある。
集落内にある案内板には外海の石積集落景観として「近世から続く畑作を中心とした生業による集落景観。大野地区では、結晶片岩に加え、大野岳付近で産出される玄武岩によって形成される石積が特徴です。この石積集落の一部が、世界遺産『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』の構成資産となっています」と説明されている。
県道202号線から入った大野集落入り口

大野集落駐車場にある世界遺産の説明板

駐車場にある大野集落の見どころの説明板

世界遺産大野集落を2021年から6回にわたって散策・調査している。
この場所から見える五島灘は素晴らしい。
6回目になる2025年7月26日、天候に恵まれ、やっと感動するような素晴らしい景色を見ることができた。
美しい島々と遠くに見える五島列島である。
外海の道路はドライブコースとして有名であり、何回となく見た景色ではある。
しかし、五島列島がきれいに見えることはあまりなく、私は数回しかここまでの景色は見たことがない。
地元の人にとっては、よく見る景色かも知れないが、たまに訪れる者にとっては感動の景色であった。
ずっと昔、この景色を見て、多くの潜伏キリシタンが五島列島に渡っていったのかもしれない、という想いにふけってしまった。
島の紹介をすると、左手手前の3つの島が、いわゆる角力灘(すもうなだ)と呼ばれる「大角力」「小角力」「母子島」である。
右手中央に見えるのが「池島」、その左手にあるのが「大蟇島」、遠くに長く連なっているのが五島列島である。
大野集落駐車場から見た五島灘(2025年7月26日に撮影)

駐車場にある地図を見てからの散策。
散策路は細い道や階段だが、きれいに整備されていて歩きやすい。
大野教会堂や辻神社などの建築物を見て回った。
ここでは、大野教会堂を紹介したい。
大野教会堂全体の写真

大野教会堂の味わいのある石壁

大野教会堂の説明板

いろいろと見どころはあるが、私が一番気になったのは「カワ」と呼ばれている水場であった。
カワという場所は、共同井戸として飲み水や洗い場として利用されていたようだ。
案内板には、「草木田」「上越首」「庄屋屋敷跡」の3つが紹介されているが、地元の人に聞いてみると他にもいくらかは存在していたが荒れてしまったとのことだった。
大野集落駐車場にある説明板(3ヵ所のカワ)

このカワという水場が両生類の産卵場として利用されているはずと思い、数回にわたり調査した。
草木田のカワ(上案内板の①)
調査したときは水が少ない感じであった。
ニホンアカガエルの幼生が数匹ではあるが泳いでいた。
草木田のカワ(周りに人家はなく水は少ない)

ニホンアカガエルのオタマジャクシ

上越首のカワ(上案内板の②)
この場所が一番両生類にとっていい場所なのだろう。
毎回のように、ニホンアカガエルとカスミサンショウウオの卵塊や幼生を確認している。
上越首のカワ(水量は豊富)

ニホンアカガエルの卵塊(2022年1月に撮影)

ニホンアカガエルの幼生(2021年3月に撮影)

カスミサンショウウオの卵塊(2021年3月に撮影)

庄屋屋敷跡のカワ(上案内板の緑②)
ここでは何も確認できなかった。
管理をされている人に聞いたところ、前はカエルの卵塊(ニホンアカガエルと思われる)見られたが、今は見なくなったとのことである。
庄屋屋敷跡のカワ

卵塊やオタマジャクシだけではどんな両生類か想像がつかないともうので、別の場所で撮影した親の写真を添付しておく。
ニホンアカガエル

カスミサンショウウオ

この地域の水田や水場はほとんど無くなっており、カエルたちは産卵する場所がなく困っている。
3つのカワは、世界遺産の中にある施設として整備され、常に水が湧き出ており、両生類たちにとっては絶好の産卵場所であり幼生の生育場所になっている。
ちなみに、ニホンアカガエルとカスミサンショウウオは絶滅危惧種に指定されている貴重な両生類である。
もし、登録されていなかったら荒れ果ててしまったかもしれない。
登録されることによって、その地の貴重な両生類が命をつなぐことが可能になった。
これも世界遺産の価値かもしれないと思っている。
いつまでも、世界遺産の一施設としてカワが残り続けることを願いながら、毎年の観察を楽しみにしたい。
最後にもう一枚、大野教会堂から撮った五島灘の風景を見ていただきたい。
大野教会堂から見た五島灘
